TokoTokoChihoChiho’s diary

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カルチャーラジオ「文学の世界」いま、心に響く歌の力「自分のためだけでなく(2)」

奇跡というのか、めったにない幸運というべきか、拙歌集「豊かに生きよ」がNHKラジオ第2放送のカルチャーラジオ「文学の世界」いま、心に響く歌の力「自分のためだけでなく(2)」で紹介された。

 

今野寿美先生の語りが素晴らしくて、自らの無意識まで掘り起こされているようだった。もう10年ほどまえに上梓した歌集なので、ああ、こんなこと詠んでたんだなあと、思い出し、照れるような恥じらうような、そんな感情も湧いた。

 

9首ほど紹介してくださったその中に、

 

自閉児に心はないといふ学者の心はどこにあるのだらうか

 

という一首があった。

ある講演を聴いたあとの一首で、それほどのインパクトはない、小さなつぶやきのような歌だと思っていた。しかし、呟きの奥には、かなり異議申し立てをしたい思いがあったかもしれない。怒ってたんだな、私・・・と、怒りをそのまま歌にしてしまったような悔い。

 

しかし、放送が思った後に、ふと、

心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ

という一首が何処かからか聞こえてきた。

西行法師、仏門に入った方の一首である。邪念のない「仏心」が心なき身であるともいえる。

 

件の自閉症についての著作は訳本だったので、いまさらながら、ひょっとしたら「心がない」にはもっと違う深い意味があったのかもしれないとも思った。

 

そして、「確かに、娘に、『邪心』はないなあ・・・」と思い至った。

心がないというのは、邪心がないことだと、そういう尊いことなのだと、思うことにした。

 

忘れ去られていた拙歌集をお取り上げくださり、熱のある解説で再考させてくださった今野寿美先生には「心」より感謝。もちろん、この「心」は邪心ではありません。

 

4月中は聴き逃し配信があるそうです。ご興味を持たれた方はどうかご視聴ください。

 

カルチャーラジオ文学の世界 いま、心に響く歌の力「自分のためだけでなく(2)」 - NHK