TokoTokoChihoChiho’s diary

短歌と短文、たまに長文、書いてます。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

3枚の福澤諭吉

お昼過ぎに到着した現金書留に添えられた手紙には、「お姉ちゃん(私のこと、長女なので)、お誕生日おめでとう。チイちゃん(娘)、お誕生日おめでとう。これからも元気でね。コーヒーでも飲んでください。◯◯さん(夫)にも1万円あげてください。」とあった…

引っ越し(12)(以前のブログから)

珈琲ショップの片隅で 12月のある土曜日の昼下がり。コーヒーショップの隅の席に陣取った。お隣りは、部活帰りの女子高生のようだ。小柄でおさげ髪。少し黒木華に似ていた。店内は満席だったが、土曜の午後らしいのんびりとした空気が流れていた。 ほっとし…

引っ越し(11)(以前のブログから)

『フィクションの表土をさらって』 玉城入野 著(洪水企画) 読み応えのあるエッセイ集である。 北野武や深作欣二の映画作品についての第一部。 島尾敏雄に関わる第二部では、福島の人々と著者と妻と、そして3.11が絡まる。 第三部は、著者の父・玉城徹との…

引っ越し(10)(以前のブログから)

人恋うてつつましすぎる若さなど杳(とほ)く眠らせ秋の水くむ 今野寿美(『若夏記』より「秋の水」) 今日、まだ若い母親だった頃の友人たちと新年のお茶会をした。今も忙しくしているひとばかりなので、むかしが懐かしいとかよかったとか、そんなことは言…

引っ越し(9)(以前のブログから)

仰向けに逝きたる蟬よ仕立てのよい秋のベストをきっちり着けて 杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』より 先日(12月)、目の前を通ってゆくものがあった。ふわっとはかなげだったが、ギョッとした。「蚊」だった。その話をSNSに投稿したら、「こちらでは蠅が飛んでい…

引っ越し(8)(以前のブログから移動)

バゲットを待つやうに待つわが父の焼きあがり時刻午後四時三十分 父はいま燃えてをらむよ菓子あまた皿に盛られて水色ももいろ 高木佳子『青雨記』より 或る日、父と母の歌を詠んだら、「両親のことが大好きなひとよりもあまり好きでないひとのほうが、よく父…

引っ越し(7)(以前のブログから移動)

月 木々が枝さしかわしあたためるたったひとつのたまごのように 佐藤弓生(『モーヴ色のあめふる』より) ブログでは横書きしかできないが、これは縦書きで鑑賞したい歌。縦書きだと、一首そのものが絵のように見える。漢字はすぐれた象形文字だなあとあらた…

引っ越し(6)(以前のブログから移動)

夕暮れの空につばさの烈しさの限界みせよ鳥であるなら 江戸雪(『昼の夢の終わり』より) 限界だー!と叫ぶことしばしば。 でも、叫んでいるあいだはまだ限界ではないのだろう。 叫ぶことすらできなくなったときは、地に臥すか、天を仰ぐか、だが、どうせな…