和嶋勝利歌集『うたとり』より
よく聞いて応へて詫びて赦されてさういふものになつてしまつた
紛争に分け入り分け入り手繰りたる蛇のやうなる落としどころを
和嶋勝利
「うたとり」とは「疑わしい取引」を簡略化した、いわゆる証券業界の符丁である、と本歌集の覚書にあった。
自分の思いとはなにか違う今のありさまを、「そういうものになってしまった」と嘆息している気もする。しかし作者は、厳しい日常業務をこなしながら、「うた」に深くかかわり、「うた」を紡いでは、「うた」の世界で羽ばたいている「とり」なのだろう。
たぶんそれは、「そういうものにわたしはなりたい」と、かつてどこかで思った「そういうもの」に、かなり近づいているのではないのだろうか。
とはいえ、何も知らず、ふいに上の二首に触れたなら、
時節柄、委員会で野党の追及をうける官僚の表情などを浮かべただろう。宮仕えの辛酸などを思いつつ。
他の歌でも、様々に想像が広がった。
厳しい環境を歌いつつも、底流にはユーモアのあるものに惹かれた。
このユーモアは作者の強さだと思う。
いずれ、
さういふ歌集を私も編みたい(^^)/。