TokoTokoChihoChiho’s diary

短歌と短文、たまに長文、書いてます。

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

歌集『光のアラベスク』(松村由利子)より

小さくて可愛い足が好まれるシンデレラまだ人気を保つ ひたひたと迫り来るもの漱石も徴兵逃れをしたという説 詩を問われ詩人は答う「一滴の血も流さずに世を変えるもの」 戦争のレシピ手を替え品を替え出てくる世紀彩りもよく パール・バック知らない若い人…

旅人(前田康子歌集:現代短歌文庫より)

春の雨踏みつつ帰る足音は迷えるように我が家で止まる 七草のみつからぬ土手旅人になりたいと言う夫は何度も 前田康子 そういえば、私の夫も「旅人になりたい」と言っていた。 結婚してまもなく、たくさんの友人が遊びにきていたときに、 「50歳になったら、…

『遺伝子の舟』(森垣岳)より

父親の気持ちがポストに届けられ春の冷たい雨に濡れおり 三人の妻を娶りし父親を鋏でちょきちょき切り取ってゆく 遺伝子の舟と呼ばれし肉体を今日も日暮れて湯船に浸す 父親は真冬の寒さ いつの日か乾いて海の向こうへ消える 作者の森垣氏と経緯は違うが、私…

『青昏抄』(楠誓英)より

「ぼく」といふ一人称をつかふ少女(こ)が道にちぎりて捨てるヒメジョオン 「コロもいつか死ぬんでせう」と吾が犬の頭撫でつつ言ひたる少女 授業中トイレにこもつた少女ゐて「泣いた分だけ軽なつた」といふ 蝶みれば蛾とよび憎む少女ゐて父より受けし虐待を言…