TokoTokoChihoChiho’s diary

短歌と短文、たまに長文、書いてます。

引っ越し(10)(以前のブログから)

人恋うてつつましすぎる若さなど杳(とほ)く眠らせ秋の水くむ

                  今野寿美(『若夏記』より「秋の水」)
 
 
今日、まだ若い母親だった頃の友人たちと新年のお茶会をした。今も忙しくしているひとばかりなので、むかしが懐かしいとかよかったとか、そんなことは言わないけれど、若いころの話が出て、大笑いもした。
 
Sさんには幼馴染の仲の良い男の子がいたという。長じるにつれて、意識するようになり、気軽に話すことができなくなったが、何気ない出来事を書いては、文通をしていたそうだ。好きだとか、一緒に帰りたいとか、そんなことは一切書かない。ただ、学校での出来事やクラブ活動のことなどを書いていたが、それがあるとき、男子の母親にみられてしまった。それがきっかけだったのかどうか、彼女自身にもわからないのだけれど、しだいに疎遠になっていったという。同じ高校に進学したが、そのまま3年生まで一言も話さなかったし、文通もしていなかった。けれど、卒業前に彼女は手紙を渡したらしい。受験の不安や近況などを認めて。すると返事が来た。しかし、酷いものだった。そんな弱音をはくような者と時間を潰す余裕はない、というような内容の・・・。
 
その手紙が、最近、実家の整理をしていたら出てきたとのこと。「読みなおすと、酷いのよ。やっぱり。そりゃー若い娘なら相当ショックを受けるわよ。」と彼女は微笑んだ。そして「まあ、面白いわね。今となってはー!」と、ころころ笑った。
 
手紙を眠らせていた時間は、酷い言葉も涙も発酵させて、味わいのあるものにするようだ。そういえば、私にもそういうことがあった。辛かったことほど、今は笑い話のネタになる。なによりも歌の素材に(^O^)。
 
だから、失恋、その他いろいろ、ありがとう。