TokoTokoChihoChiho’s diary

短歌と短文、たまに長文、書いてます。

障害者施設反対68件 21都府県、中止・変更 (毎日新聞調査)

https://mainichi.jp/articles/20191223/ddm/001/040/126000c

 

近所に障害者交流センターができるときにも反対があった。
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そこはかつて池だった。
私が引っ越してきたときは、芥が浮いている池だった。
けれども誰かが捨てたのだろうか、アヒルが二羽。
仲がよさそうで、ツガイなのかなと思ってよく眺めていた。
子どもの頃、縁日で買ったアヒルを何度か育てたことがあったからだろう。ただ懐かしかった。
一羽は片目が半ば閉じているようだった。それでも器用に泳いでいた。よく頭を汚れた水面にもたげて何かを探していた。
向いにあった中古車屋さん(というより、古古車屋さん)の従業員が食パンを投げていたのを見たことがある。
そんな人たちが数人いて、アヒルは命を繋いでいたようだ。
汚い池だったが、まれにシラサギも見かけた。
「きったなー!」と思ったのか、たいていすぐに立ち去ったけれど。
そんなある日、それは突然のことだった。
ポンプが設置されて池の水が抜かれていった。
水が残っているほうへ、残っているほうへと移動していたアヒルたちは、それからまもなくして姿を消した。
埋め立てられたところは市の土地だったが、何処かの不動産屋が買い取ったらしいという噂。おりしも地価は狂乱。転がり転がされて老人ホームが建つということになった。
ところがまた一転。老人ホームの話は立ち消えとなり、市が土地を買い戻したということが知らされた。買った時の、10倍以上の値と言うが、根も葉もない噂か、根も葉もある事実なのかは一般人にはわからぬ闇だ。
そして件の障害者交流センターの建設案が市民に知らされたのである。すると、その「もと池」に隣接するマンションの自治会が、ご近所のマンション住民に呼びかけた。運動の中心にいたのは某大新聞の記者だった。
「皆で反対しませんか。反対しましょう。なぜ障害者施設なのですか。美術館や図書館ならまだしも・・・」とのこと。
しかし、反対運動に誘われた近隣のマンション自治会では、「反対する筋合いのものではない。反対理由がわからない。人道上、反対などできない」という意見が多く、結局、反対運動には加わらなかったので、障害者支援センターは建設の運びとなった。
障害者用のプールや作業所、デイサービス施設などがあって、うちの娘はよくプールを利用している。
でも、付き添いで行くと、ふと思い出し尋ねたくなるのだ。
「あのう、あのアヒルたちは何処にいってしまったのでしょうか」

 グループホーム(GH)などの障害者施設が住民の反対で建設できなくなったり、建設予定地の変更を余儀なくされたりしたケースが、過去5年間に少なくとも全国21都府県で計68件起きていたことが毎日新聞の調査...