歌集『カミーユ』(大森静佳)より
追うというより追いつめてしまうから琵琶湖に赤い月がのぼるよ
八月のわたしにだけは見えていたあなたの奥に動かない水
大森静佳
わたしにはとても詠めないけれどとても好きな歌がたくさんあった。
この二首が特に好きということではない。
琵琶湖、と、動かない水に、身体の奥の水が揺れた。
琵琶湖のほとりに、「アンアンananアンアン」??というような名の店があった。レストランだったのか、喫茶店だったのか、よく覚えていない。
大原の方から峠を越えて、琵琶湖へ向かって下ったところ?? これもあいまい。
24時間営業だったのだろうか。
暗い山の中腹から、湖のほとりの小さな星に向かって降りてゆくと、そこは、アンアンananだった・・・みたいな。
二度訪れたような気がする。 たしか、始まりと終わりのとき。
終わりは、もう何を言っても、動かない、昏い水のようだったことを、いまごろ思い出した。
その思い出も、既にわたしだけのものになってしまったけれど。