娘を作業所の送迎場所まで送っての帰り道、3歳くらいの女の子が、父親らしき人と手を繋いで歩いていた。運転しながらチラッと見ただけだが、大人のロングコートを模したオシャレなコートを着た、いわさきちひろさんの絵のような女の子。
ああ、かわいい、と思って通り過ぎたあと、涙があふれた。
あんなころが娘にもあった。ただ、歩いているだけで可愛かった。
なのに、わたしは、発達の遅れを気にしながら焦っていた。
焦って、リトミックやらスイミングやら、幼児教室やら、のべつまくなしに、娘を引っ張りまわしていた。わけがわからなくておろおろする娘の手を引いて、速足で歩いていた。いらいらしていた。ザワザワしていた。ほんとに馬鹿な母親だった。
あのころの娘に逢いたい。
あのころの娘に逢えたなら、ただ、抱きしめて、ずっと、抱きしめて言いたい。
ごめん。浅はかな母さんだった。他人の子と比べても仕方ないのに。
あなたはどんなあなたでも私の一番たいせつなあなただ。
あっちこっち連れて行かれて辛かったねえ。
もう、ゆっくりでいいから。
ゆっくりまったり、母さんと歩いていよう。
いや、歩かなくったっていい。このまま、ここで温めあっていようね。